秘密のくらし(1)『パンダ銭湯』(2013)絵本館
tupera tupera:作
「パンダ以外の入店は、固くお断りしています。 パンダ湯」
虫や動物にまったく関心がない人っていますよね。私は3人兄弟ですが、子どもの頃から生きものが好きなのは私だけでした。同じように育ったはずなのに、どうしてこんなに差があるのか……。生きものが活躍する絵本を紹介する理由には、絵本をきっかけに生きもの好きの子どもが増えればいいなあ、という思いがあります。
そんなわけで、2つ目のテーマは「秘密のくらし」。生きものの不思議な外見や生態を巡るお話です。キツツキはなぜ木をつつくのか、タコにはなぜ硬い骨がないのか、その理由をさまざまに想像して物語にした由来譚は、昔から世界中で語られています。動物の生態を科学的に調査できる時代になっても、子どもたちにとっては、素朴な「なぜ?」が関心の端緒になることに変わりはないでしょう。
パンダは何で白黒で、目の回りと手足だけが黒いのでしょうか。パンダの生息環境ではあの色彩がちょうどよいカムフラージュになると聞いたことがありますが、それにしても不思議です。広い中国でも険しい高山地帯にしかいないため、ジャイアントパンダという動物の存在が広く世界中の人間に知られるようになったのは、近代になってからのようです。民俗的な史料も少ない分、たとえば日本人にとっての「人を化かす狐」や「お調子者の猿」のような昔話の伝統によって定着しているキャラクター性からは自由なので、さまざまなイメージを仮託することができる存在かもしれません。
今回取り上げる『パンダ銭湯』は、そんなパンダの白黒模様の秘密を、大胆な想像力で解き明かす問題作です。お風呂道具を片手に、動物園から「よし きょうはせんとうにいくか」「やったあ!」と銭湯に向かったパンダの親子。パンダ銭湯「パンダ湯」は、「パンダのための おふろやさん」です。かあちゃんは女湯へ、とうちゃんとぼくは男湯へ。パンダ以外、他の生きものは入場禁止の銭湯でのお話ですので、明かされる秘密をニンゲンが漏らす野暮はよしましょう。「えー、そうだったの!!」と笑ってしまうまさかの大スクープです。荒唐無稽なお話から、それでも解けない「なぜ?」のタネを抱えて、生きものの謎に分け入っていくのはいかがでしょうか。
上野動物園でシンシンが双子の赤ちゃんを産んだのもニュースになりました。何だかんだ言っても、やっぱりパンダは人気者。「人寄せパンダ」とはパンダにはあんまりな言い方ですが、お姉さんになったシャンシャンの秘蔵映像を特典にして、環境保全を啓発する「パンダアクション」というキャンペーンを上野動物園は2020年に実施しています。密猟の問題や、環境負荷の問題など、パンダを切っ掛けに「今の私たちにできること」を考える企画になっています。
上野動物園『パンダアクション』
パンダと言えばWWFでも看板動物。生息環境を守る取り組みを紹介しています。
世界自然保護基金(WWF)『パンダの生態と、迫る危機について』