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ネオニコチノイド系農薬問題とは?~情報・資料集~

ネオニコチノイドとは?

ネオニコチノイド系農薬とは、ニコチンに似た成分(ニコチノイド)をベースとする、現在世界でもっとも広く使われている殺虫剤で、1990年代から市場に出回り始めました。一般にネオニコチノイドと呼ばれる化合物は、アセタミプリド、イミダクロプリド、クロチアニジン、ジノテフラン、チアクロプリド、チアメトキサム、ニテンピラムの7種類あり、これらを主成分とする農薬・殺虫剤は様々な用途や製品名で販売されています。また、以下の説明で「ネオニコチノイド系農薬」という場合は同じ浸透性農薬であるフィプロニルを含みます。ネオニコチノイド系農薬は脊椎動物より昆虫 に対して選択的に強い神経毒性を持つため、ヒトには安全とされ、ヒトへの毒性の高い有機リン系の農薬に代わる効率的な殺虫剤として、2000年代から農業を始め家庭用の害虫駆除剤やペット用に幅広く商品展開が行われました。さらに、水に溶けて根から葉先まで植物の隅々に行きわたる浸透性殺虫剤として、作物全体を害虫から守れる効果的な農薬という宣伝のもと、現在では農地や公有地などで大規模に使われています。

浸透性農薬は水をつたって植物の内部へ浸透する

出典:Tomizawa & Casida, J. Agric. Food Chem 59 (7), 2883–2886 (2011)

しかし、ネオニコチノイド系農薬の使用拡大と同時期に、世界各地でハチの大量死が相次いで報告され始めました。ハチは農業を行う上で重要な役割を担う花粉媒介者であるため、ヨーロッパではいち早く2000年代初頭からネオニコチノイド系農薬の使用を規制する動きが始まります。2013年半ばには、欧州委員会が3種類のネオニコチノイド系農薬と、同じ浸透性殺虫剤でネオニコチノイド系農薬と似た性質を持つフィプロニルの使用について、同年末から2年間の暫定規制を決定しました。この決定は、科学的証拠は十分ではないものの、環境と生命に多大な影響を及ぼす可能性が高いと想定される場合に適応される予防原則に基づいたものです。代わりとなる安全な農薬がなく、ハチの大量死とネオニコチノイド系農薬との直接的な因果関係の立証が科学的に未確定ななか、ネオニコチノイド系農薬の包括的な規制に向けて一歩踏み出す決定かもしれません。
 

生態系へのリスクと欧米での規制

ハチを含む生態系への影響が懸念されるネオニコチノイド系農薬の特徴として、神経毒性浸透性残留性の3つがあげられます。昆虫に対する強い神経毒性は、ターゲットとなる害虫以外にも益虫を含む多くの昆虫を殺したり、生存が困難になるような障害を負わせたりしてしまいます。また水に溶けることで、水を介して周辺の草木や地下水に入り込み、殺虫剤を使用していない地域へも広がる危険があります。そして、一度使われると土壌や水の中に長く留まり蓄積していくため、低濃度のネオニコチノイド系農薬に長時間曝された昆虫類が異常行動を起こすなど、生態系に大きな悪影響をもたらす可能性が指摘されています。

ネオニコチノイド系の農薬が市販され始めた当初、長期的な毒性やヒトを含む生態系への影響はほとんどわかっておらず、安全性が明確に示されないまま大量に使われてきました。しかし、鳥類や哺乳類への影響に関する報告をはじめ、ヒトへの影響も徐々に明らかにされつつあります。ネオニコチノイド系の農薬散布と同時期に体調不良を訴える患者が急増したり、胎児が発達障害を起こしたりする危険を指摘する報告もあり、ネオニコチノイド系農薬は私たちにとっても身近な問題となってきました。

各国での規制が進むなか、日本ではネオニコチノイド系農薬問題への認識が低く、現時点でネオニコチノイドの使用そのものに対する規制がない上、使用量の規制緩和が行れるなど他の先進国とは逆の動きも見られます。また、ネオニコチノイド系農薬の残留基準もヨーロッパの数倍から数百倍に達する場合が多いため、日本の生態系に大きな影響を与えている可能性がありますし、同時にネオニコチノイド系農薬が使われた農作物を購入し、洗っても落ちないネオニコチノイドを大量摂取することで、人体への影響も懸念されます。まずは一人ひとりがこの問題に対する理解を深めることが大切です。