
アクト・ビヨンド・トラスト(abt)のメンバーが、日々感じたことを徒然に綴る「abt徒然草」。第23回は広報担当の島内梨佐です。
4年ぶりの更新となるabt徒然草では、絵具の原料について少し紹介しようと思います(島内の本業は画家!)。
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【絵具の原料】
絵具は植物や鉱物からつくった粉末(顔料)を、のり(固着材)と混ぜ合わせることで完成します。水彩絵具、油絵具と呼ばれるものは固着材に何を使ったかで分けられます。

たとえば、孔雀石(顔料)の粉末と膠(のり)を混ぜれば青緑色の岩絵具(日本画用の絵具)が完成します。また、同じ素材を使っていても顔料と固着材の配合比が変わると透明水彩、不透明水彩と種類が変わります。同じ透明水彩でもメーカーによって調合率が異なるので、微妙に色合いが違うのはそれが理由になります。
【絵具の毒性について】
中には毒性をもった顔料もあります。カドミウムやコバルトがそうです。
毒性といっても絵具を体内に取り込まなければ人体に影響はなく、健康へのリスクが少しある程度で大きな害はありません。ほとんどの絵具にはAPマーク(安全認証マーク)※が記載されており、危険性が高い色にはラベルに「×」印か「CLマーク」が入っているのでチューブを見ればわかります。詳しく知りたい方は、参考資料をご覧ください。
※(ASTM(米国試験材料協会)規格D4236(慢性的有害物)と米国有害芸術資材表示法(LHAMA: Labeling of Hazardous Art Materials Act)に安全基準に合致している事を証明された製品

もちろん毒性がない絵具もあります。絵具の名前をよく見ると「ヒュー(色相)」「ノーバ(新)」と書かれた絵具名があります。これはオリジナル色の代替色としてつくられたもので、「元の顔料の毒性が高く、すでに廃盤になった」「元の顔料の価格が高い」「元の顔料の耐光性が低い」などの理由で新しくつくられた絵具です。オリジナルと比べると色合いが変わるので、様々な意見はありますが、安全性が優れている点は大きいです。
【オーガニック絵具】
他には野菜の粉末を使った絵具もあります。野菜絵具は、色や形が悪く廃棄されてしまう野菜を再利用するためにつくられはじめたことが多いですが、より安全性を求め、有機野菜にこだわったものも増えてきました。
たとえば、植物由来でつくられたオーガニック絵具だと
・パプリカ
・ココナッツ
・藍の葉
・ターメリック(ウコン)
・ブルーベリー
・かぼちゃ
・ほうれん草
など、子どもが食べても大丈夫なものでつくられています。ちなみにココナッツだと黒色ができます。
オーガニック絵具もだいぶ数は増えましたが、色数も販売元もまだまだ少ないです。手軽にはじめたい方は手元にある野菜でつくれる方法もありますので、子どもと一緒につくってみるのも楽しいかもしれませんね。
植物以外にも、天然の顔料(合成ではないもの)や植物の樹脂や樹液(固着材)を使用して作成された天然の絵具と呼ばれる環境に配慮した絵具など、ここでは紹介しきれないぐらいありますが、長くなるので今回はここまでにしたいと思います。
趣味で絵をはじめたいけど、どんな絵具を買えばいいかわからない方、子どもにとって安全な絵具を与えたい方の絵具選びの参考になれば幸いです。
【参考資料】
株式会社ターレンスジャパン「基礎知識」
株式会社ホルベイン画材「ラベル表記の見方/製品を安全にお使いいただくために」
株式会社クサカベ「Q&A絵具全般」
株式会社Maharanee Organic「やさいいろ」
キッズネット「野菜やくだもので絵の具をつくってみよう」