ネオニコチノイド研究会の代表を務める平久美子氏らがまとめた新論文「Human plasma protein bindings of neonicotinoid insecticides and metabolites」(ヒト血漿タンパク質のネオニコチノイド系殺虫剤および代謝物との結合)がScientific Reports誌に掲載されました。
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Taira, K., Ikenaka, Y., Bonmatin, JM. et al. ”Human plasma protein bindings of neonicotinoid insecticides and metabolites”. Sci Rep 15, 13155 (2025).
https://doi.org/10.1038/s41598-025-96812-y
著者の平医師から論文の概要を解説いただきました。論文は上記リンクからオープンアクセスで閲覧可能ですので、気になる方はぜひ本文をご覧ください。
【以下、平先生による解説】
ネオニコチノイドは世界で最も多く使われている殺虫剤で、水溶性だから人体に蓄積しないと考えられてきたが、どうやらそうではないらしい。
大人の血液は体重の約7%、体重50kgの成人では約3.5リットルだが、血球を除いた血漿約2リットルの中に、アルブミンなどのタンパク質が約150グラム含まれている。本研究では、7種類のネオニコチノイドとその代謝物の血漿タンパク質結合率を調べた。
驚くべきことに、イミダクロプリドの28%、アセタミプリドの42%、クロチアニジンの48%が血漿タンパク質と結合し、それぞれの代謝物も最大86%がタンパク質と結合した。血漿タンパク質と結合したネオニコチノイドは、尿中に排泄されない。
毎日摂取していると、血漿中に蓄えられたネオニコチノイドは、徐々に脳や肝臓、腎臓などの重要臓器に移行し、肝障害や腎障害、発達障害をひきおこすかもしれないのだ。そのことを裏づける知見も数多く紹介されている。
この研究により、農薬のみならず、環境化学物質の毒性評価に大きな変革がもたらされるかもしれない。