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トップページ イベントレポート 公開セミナー「食べものと生きものに赤信号!? ~新しい農薬、ネオニコチノイドのリスク」レポート

去る3月31日、abtは公開セミナー「食べものと生きものに赤信号!? ~新しい農薬、ネオニコチノイドのリスク」をウェスレーセンター(表参道)にて開催。第一部は、国際環境NGOグリーンピース・ジャパンの関根彩子さん、NPO河北潟湖沼研究所の高橋久さん、高橋さんとともに農薬を使用しない米やレンコン作りに取り組む、農事組合法人Oneの宮野義隆さんをお招きし、ネオニコチノイド系農薬の問題点と農業の現場での取り組みやその成果、今後の課題などについてお話しいただきました。第二部は、abtの2017年度公募助成先「生活協同組合連合会 コープ自然派事業連合」と「公益財団法人 みやぎ・環境とくらし・ネットワーク」から、ネオニコチノイド系農薬問題に関する活動報告をしていただきました。

 

公開セミナー「食べものと生きものに赤信号!? ~新しい農薬、ネオニコチノイドのリスク」

「食べものと生きものに赤信号!? ~新しい農薬、ネオニコチノイドのリスク」パネルまずセミナーの冒頭は、関根さんからネオニコチノイド系農薬の特徴や世界の規制状況、人体への影響、身近な所での使用などについて報告があり、高橋さんからは田んぼごとの生きもの調査や田んぼのトレーサビリティについて、宮野さんからは自らが取り組む、土づくりを大切にして消費者に安全が見える形の米作りが紹介されました。

続くパネルディスカッションでは、まず3人ぞれぞれの立場から、ネオニコチノイド系農薬のこれまでの動向について、率直な意見を述べていただきました。関根さんからは、「行政の動きの遅さと同時に消費者の力の大きさを感じている」と、行政・流通・消費者といった多方面への働きかけから得た感触のお話がありました。高橋さんは、「米に有害なカメムシ防除のためにネオニコチノイド系農薬が必要だと言われてきたが、農薬をやめても何の問題もなかった」と、必要以上に農薬が使用されている現状を報告。宮野さんは、「河北潟湖沼研究所の生きもの調査は客観的で消費者の信頼も高く、情報のプロフェッショナルが近くにいるのは心強い」と、情報の質の重要性を強調されました。

このあと、環境保全型農業を広げていくためには、強い思いを持って自らが信頼される存在になることの大切さや、小規模農家でもできる無農薬のコメ作りなど、生産の現場で活躍するお二人からの力強いメッセージが続きました。関根さんは、行政が動かない反面、スーパーなどの小売店は消費者の声に耳を傾けようとしていて希望が持てるので、今後、スーパーが変わり、消費者が選ぶというサイクルを加速させたいと語りました。

質疑応答では、参加者から「ネオニコは不要な農薬と考えてもよいか」との質問に、「河北潟では不要だが、万が一のカメムシ大発生に備えて常備薬的な位置づけはあるかもしれない」(高橋)、「斑点米については機械で除去でき、農薬のコストから考えても不要だと思う」(宮野)との回答。「河北潟のような活動を他でも普及することは考えているか」との質問には、「現時点では考えていないが、パッケージ化して他地域でもできるとは思うし、ネオニコ問題の認知が上がれば広がる」(宮野)との回答が得られました。

国際環境NGOグリーンピース・ジャパン
http://www.greenpeace.org/japan/ja/

NPO河北潟湖沼研究所
http://kahokugata.sakura.ne.jp/

農事組合法人One
http://www.one2013.com/

2017年度「ネオニコチノイド系農薬に関する企画」成果報告

第二部では、abtの2017年度公募助成先「コープ自然派事業連合」と「公益財団法人 みやぎ・環境とくらし・ネットワーク(MELON)」から、ネオニコチノイド系農薬問題に関する取り組みの活動成果を報告いただきました。

「ネオニコフリー想いをつなぐリレー学習会の取組み」
コープ自然派事業連合常勤理事 鎌田妙子さん

コープ自然派事業連合最初はコープ自然派事業連合の鎌田妙子さんから、生協ネットワーク21の拠点の内、全国7ヵ所で開催された「ネオニコフリー想いをつなぐリレー学習会」について発表がありました。生協ネットワーク21は、食品の安全基準にこだわりのある比較的小規模な生協のゆるやかな連合体ですが、ひとつのテーマでの運動は初めてとのこと。学習会の講師には中下裕子さん、黒田洋一郎さん、木村ー黒田純子さん、岡田幹治さんを迎えて、ネオニコチノイド系農薬の使用や規制の課題、毒性と発達障害との関係などの講演が行なわれ、全国で563名が参加しました。参加者の中には初めて聞いた方という人も多く、「食のあり方を通して、自然環境や生物多様性の回復、子どもの未来が描けるような行動を進めていきます」といった熱心な声が聞かれ、仙台では入場制限がかかる大盛況だったそうです。

2017年度はこの他にも、商品にネオニコフリーマークを表示するなどの活動を開始。2018年度は、ネオニコ問題のリーフレット配布や、引き続き消費者向けの学習会開催に加え、生産者を対象とする学習会やネオニコフリーの先進事例共有なども予定しているとのこと。

発表の最後は、徳島の田んぼで2年続けてコウノトリのヒナが誕生したという微笑ましいスライドが紹介され、環境保全の取り組みの成果を理解することができました。

コープ自然派
http://www.shizenha.ne.jp/

「情報発信ツールを用いたネオニコチノイド系農薬の認知度向上と情報収集の場の提供」
公益財団法人 みやぎ・環境とくらし・ネットワーク 高橋民子さん

公益財団法人 みやぎ・環境とくらし・ネットワーク二番手として、「公益財団法人 みやぎ・環境とくらし・ネットワーク(MELON)」の高橋民子さんより、紙芝居を使った「情報発信ツールを用いたネオニコチノイド系農薬の認知度向上と情報収集の場の提供」について発表が行なわれました。MELONは2015年、一般消費者や生産者、流通・加工業者に対してネオニコチノイドに関する認知度調査アンケートを実施。これにより、若い世代を中心とした一般消費者や生産者の認知度が低いこと、知っていても行動に結びつかないことなどがわかり、2017年度の活動につながりました。

紙芝居は、ネオニコチノイド系農薬の特徴と問題を知ってもらう『ネオニコチノイド系農薬ってなぁに?』と、家庭用殺虫剤やペットのノミ取りなどにも使われていることを伝える『お家のなかのネオニコチノイド?』の2本。9月16日に行われたネオニコフリーの田んぼでの生きもの調査では、この紙芝居の上演とともに、農薬を使わない米作りをしている農家さんのお話を聞くことができ、環境保全型農業の大切さに加えてネオニコチノイド系農薬の理解も深まったそうです。

この他、「環境フォーラムせんだい2017~みんなでつなぐ環境の輪~」では、ネオニコチノイド系農薬を特集した冊子の展示、生きもの調査の結果報告、アンケート調査、クリアファイルの配布が行われたとの発表がありました。

公益財団法人 みやぎ・環境とくらし・ネットワーク
http://www.melon.or.jp/melon/index.htm

第二部の質疑応答では、「生協のお米は割高になるか」との質問に、「コープ自然派のお米は直接買い取りで精米も自分たちで行なうなどの努力をし、スーパーと同じくらいの値段にしている」との回答に続き、「野菜も含め、スーパーの値段の120~125%だったら買ってもらえるだろうと考え、農業技術の積み重ねや物流コストを抑えるなどの工夫をしている」(鎌田)と現場のご苦労が紹介されました。また、「危険性を理解してもらうため、体内の農薬をイベントで手軽に調べられないか」との質問には、会場の参加者や登壇者から「野菜の残留農薬は検査機関に出せるが、体内の数値を簡単に調べる技術は現在はない」との回答がありました。

セミナー参加者からは、「様々な立場の人の意見を一度に行ける貴重な機会でした」、「ネオニコのリスクを知らないJAや農家にも早急に認知してもらい、早く使用禁止につなげたい」、「小さい生協のがんばりを知って良かった…自分が入っている生協でも取り組んでほしい」など、あらためてこの問題の認知の広がりと取り組み強化を求める声が多数寄せられました。

会場の様子