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トップページ 法制度・生産量・製品名 ネオニコチノイド系農薬の再評価進捗状況(2025.9.30更新あり)

【改定農薬取締法に基づく再評価】

2018年に改定された「農薬取締法」に基づき、2021年から農薬の再評価が行なわれています。これまでは製品単位で3年ごとに再登録を行なっていたのを廃止し、原体(農薬に使用される物質)単位で15年ごとに見直すというものです。この評価結果に基づき、既登録剤についても原体規格を設定し、ADI(一日許容摂取量:ヒトが毎日生涯食べ続けても安全とされる量)、ARfD(急性参照用量:24時間以内に摂取しても健康への影響がないとされる体重1㎏当たりの量)等の毒性指標、農薬の使用基準、残留基準値等の確認または再設定を行なうことになります。

【評価を担当する府省】(2024.4に変更あり)

新規登録と同様に、食品安全委員会、厚生労働省、環境省、農林水産省の4府省での再評価が進行していましたが、厚生労働省の管轄であった食品残留基準の設定業務が2024年4月に消費者庁に移管されました。ネオニコチノイド系農薬では、アセタミプリド、イミダクロプリド、クロチアニジン、ジノテフラン、チアメトキサム(浸透性農薬フィプロニルも含む)についてメーカーによる農林水産省への資料提出が完了し、現在各府省で評価中となっています。以下、簡略化した模式図で現状を整理します。

【農水省による再評価申請受理(①)】

2021年12月:イミダクロプリド、クロチアニジン、チアメトキサム
2022年3月:アセタミプリド、ジノテフラン
2022年12月:フィプロニル

【農水省各部会での評価】

2022年12月23日の農業資材審議会農薬分科会において、各部会での審議に回すことが決まり(②)、各部会で評価中です(③)。

◆蜜蜂影響評価部会

2024年6月5日にイミダクロプリドの曝露影響に用いる数値(毒性指標値)が修正され、その値に基づいた影響評価の結果、2025年3月5日(第16回)に「申請された使用方法や被害防止方法に基づき使用される限りにおいて、ミツバチの群の維持に支障を及ぼすおそれはない」との結論に至りました。同じくフィプロニルも、2025年6月13日(第17回)に以下の毒性指標値が了承され、値に基づく評価の結果、使用によってミツバチに問題なしとされました。その他の原体は下記の数値に基づき、曝露量推計のため継続審議中です(③)。

n h LD50=n時間での半数致死量 ai/bee=ハチ1頭当たりの有効成分量 n d LDD50=n日での1日当たりの半数致死摂取量

◆農薬使用者安全評価部会

2025年8月22日(第21回)にイミダクロプリド、フィプロニルについて農薬使用者安全評価書案(非公開)が提出され、継続審議中です(③)。

【食品健康影響評価】

2025年7月16日にイミダクロプリド、8月28日にフィプロニルの評価書を決定し、ADI、ARfDを農水省(⑥)、消費者庁(⑨)宛てに通知しました。その他の原体は審議継続中です。


【環境影響評価】

鳥類登録基準設定検討会

以下のスケジュールで、中央環境審議会水環境・土壌農薬部会農薬小委員会に基準値案(非公開)が提出されています。

◆水域の生活環境動植物登録基準設定検討会:

以下のスケジュールで、中央環境審議会水環境・土壌農薬部会農薬小委員会に基準値案(非公開)が提出されています。

◆中央環境審議会 水環境・土壌農薬部会農薬小委員会:

上記の検討会の報告に基づき、以下の基準値案が検討されています。

※「生活環境動植物の被害防止に係る農薬登録基準値(案)」2025/9/14パブコメ

▼再評価の進捗状況はこちらのページで更新されます。
農林水産省「再評価の審査の実施状況」

▼市民団体のデトックス・プロジェクト・ジャパンも再評価の進捗状況を報告しています。
木村-黒田 純子「農薬再評価の進捗状況」

▼再評価制度そのものの問題点については、こちらの論考が参考になります。ぜひご参照ください。
環境脳神経科学情報センター「農薬取締法改正と農薬再評価の問題点

▼日本内分泌撹乱物質学会もニュースレターを公開して問題点を指摘しています(PDF)。
日本内分泌攪乱物質学会「ENDOCRINE DISRUPTER NEWS LETTER」 May 2023, 25 (4)

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