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イベントレポート

第3回 10月16日(土)
気候変動と環境正義――世代と地域と経済の格差から

環境問題や気候変動は、人権侵害や格差の問題と密接に関わっています。そうした不公正や不平等の是正に取り組む考え方は「環境正義」(テーマ限定の場合は「気候正義」など)と呼ばれます。環境正義は世界各国が進めるべき温暖化対策における重要な概念であり、米国の現政権も公約に大きく掲げています。第3回Future Dialogueでは、探査報道に特化したジャーナリズムNPO「Tansa」編集長の渡辺周さんとリポーターのアナリス・ガイズバートさん、環境活動家の露木志奈さん、Fridays For Future Japanオーガナイザーの冨永徹平さんをお迎えし、エネルギーと気候変動問題にテーマを絞って、それぞれの活動や課題から環境正義をどのように実現していくかをお話しいただきました。


講演1:渡辺周(わたなべ・まこと、NPO「Tansa」編集長)
「シリーズ『石炭火力は止まらない』取材から見えてきたこと」

渡辺周/Tansa編集長

朝日新聞を2016年に退社、2017年に創刊した非営利独立の探査ジャーナリズム組織ワセダクロニクル(現Tansa)の編集長に就く。Tansaでは、電通のステマ問題、製薬マネー、北朝鮮による日本人核科学者の拉致疑惑などを手がける。

大量の公害物質を排出する石炭火力発電所を輸出している日本企業

今日は、気候変動問題についてTansaの「シリーズ『石炭火力は止まらない』取材から見えてきたこと」というタイトルでお話ししたいと思います。まずTansaとは何かというと、探査報道に特化したオンラインメディアです。探査報道とは、いわゆる大本営発表ではなく、独自取材をもとに暴露しなければ埋もれてしまう事実を掘り起こして報じることです。こういった報道は、お金はかかる、時間はかかる、訴訟リスクもある。日本のメディアはどんどん撤退しています。たとえば、僕の古巣の朝日新聞の特別報道部も今年の春に廃止されました。そういう状況で、あえて手間暇かけて事実を暴いていくメディアになろう、ということで立ち上げました。Tansaは広告料は取っていません。スポンサーの介入を防ぐため、資金は主に寄付と助成金でまかなっていまして、ヒーヒー言いながら毎日やっております。

それでは本題に入ります。「ブレーキの壊れた政官財」というテーマで、石炭火力発電所建設をめぐる政官財の問題を中心に見ていきます。僕は、実際にインドネシアに行って取材をしたのですが、インドネシアに西ジャワ州チレボン県というところがあります。そこに日本と韓国の企業が日本政府のバックアップを受けて、石炭火力発電所を建設しています。1号機はすでに稼働しており、2号機は建設中で間もなく稼働する予定です。

なぜこれを取り上げたかというと、温暖化どころか、大量の公害物質、大気汚染物質を排出する発電所を日本が輸出しているからです。大気汚染の原因になるSOx(硫黄酸化物)とNOx(窒素酸化物)という物質があります。これは両方とも、呼吸器系疾患などのリスクを増加させる公害物質です。これらの排出濃度をチレボンと神奈川県にある磯子火力発電所と比べたときに、チレボンの発電所から排出されるSOxは磯子の23倍、NOxは31倍、これだけ差があるわけです。つまり日本の最新鋭の発電所では、公害物質を出さない高い技術を使っている。ところが、インドネシアに発電所を輸出するときには建設コストを抑え、20倍から30倍も公害物質が出るような発電所を輸出している。何が問題かというと、地球のことや、現地の人のことは考えていない。「発電所を売り込めればそれでいいや」という姿勢なのです。

利権がないのに日本政府は何故石炭火力にしがみつくのか

この背景には、近年、海外のインフラ案件で日本は中国に負けているという事情があります。そうした状況の中、政府は焦ってJBIC(Japan Banks for International Cooperation:国際協力銀行)のような政府100%出資で財務省が管轄している銀行にすがりついて、何とかインフラ案件を受注したいと画策してきた。このチレボンの発電所も、安倍晋三元首相がインドネシアに行ってトップセールスをし、調印もしてきた。政官財ぐるみでこういうことをやっているわけです。

この計画の中心になっているのは丸紅という商社で、総事業費3000億円のプロジェクトです。ちなみにJBICは、このプロジェクトに対して1000億円以上の融資をしています。こうして日本政府のお墨付きとバックアップのもと、公害を撒き散らす石炭火力発電所をインドネシアに輸出している。現在、温暖化対策は世界的な課題になっていますが、温暖化対策どころか、そもそも公害を引き起こすような発電所でさえ平気で輸出してしまう。こういう日本の政官財のDNAというか、何ともいえないダメさ加減がインドネシアの発電所をめぐって表われている、という現状があるわけです。

写真は現地です。向こう側に煙突があって、手前がチレボンの村ですね。これくらい発電所と住宅が近い。住民の反対運動も起きているのですが、現地では軍や警察を使って反対運動を抑えるわけです。僕もチレボンに取材に行ったときに、公安警察とみられる2人につけまわされて監視されました。何がなんでも反対運動を抑えようという、インドネシアの国家的意思が感じられます。

この問題は、今や温暖化は地球的な問題になっていて待ったなしなのに、何でこういったプロジェクトが止まらないのかということがポイントだと思っています。これを僕は「消極的利権」と呼んでいます。このような政官財の癒着には、みなさん、必ず裏に何か利権があるんじゃないかと考えますね。「何の利権なんだ?」と。このチレボンの発電所建設をバックアップしている丸紅、そして2号機の建設にはJERA(東京電力と中部電力の合弁会社)も出資しています。そういった企業が政治家に利権をもたらすんじゃないか、何らかの見返りがあるんじゃないかといっても、実はそんなにないんです。わかりやすい利権はない。かつてのバブル経済期とか、選挙区も中選挙区制で自民党の議員同士が当選するために争っていた時代には、金の延べ棒が出てきたりしていました。しかし、もはや政治資金規制も法律が強化されて、政治と金の問題はいまだに消えませんけれど、そんなにわかりやすく、「この利権を押し通せば大きな金が動く」という背景は存在しないわけです。

再エネで世界と競争をしたくない政官財の体質

では、なぜ巨額の資金を投じてインドネシアに発電所を造るのか。そこで思い出したのが「19兆円の請求書」という出来事です。これは何かというと、2000年代前半のことですが、経済産業省の課長クラスの官僚たちは核燃料サイクルの推進を疑問視していました。原発から出た核燃料を再利用するには莫大な費用がかかる。高速増殖炉のもんじゅもうまくいかない。そこで経産省の官僚たちは意を決して、このままでは「19兆円のコストを要する」という文書を国会内などでばら撒いた。しかし、自民党の政治家からすぐに反撃に遭って、潰されてしまいました。

このときの官僚たちは経産省を追われたり、違う省庁に異動になったりしています。その後、僕はこの「19兆円の請求書」の中心メンバーの一人だった伊原智人さんという方に取材をしました。その取材の中で、伊原さんが面白いことをおっしゃっていました。

伊原さんは若いとき、2001年の中央省庁再編前、経産省の前身の通産省でNTTの分割を担当していました。当時、NTTドコモがNTT本体から分社化するときに、NTT本体の人たちは何と言っていたかというと、「NTTドコモなんてあんなのは飛ばされた連中が行くところだ」と。「日本人というのは、電話は音質にこだわるから固定電話じゃないとだめなんだ、携帯に替えるわけがない」とバカにしたように言ったのだそうです。ところが、どうなったか。携帯電話がどんどん普及して、いまやスマホの時代になった。伊原さんが取材でおっしゃっていたのは、「結局、競争したらできるんだ」ということです。

エネルギー問題もこれと一緒で、「競争しないだけだ。競争したくない人たちがしがみついているだけだ」と伊原さんは言うわけです。これが「消極的利権」の構造です。伊原さんは「原発をやらないといけないとか、石炭がないとやっていけないと言うけれど、結局は自然エネルギーの分野で競争したくない、もともとの既得権益を得ている人たちが原発や石炭火力発電を止めようとしないだけなんだ」とも言っていました。これがチレボンの石炭火力発電所建設にもつながっているという話です。

原発も石炭火力発電もやり出したら止められない

こうした経緯から何を考えるかというと、これは「日本権力ムラ」のDNAではないか。今に始まったことではなく、かなり根深い問題です。つまり、やり出したら止まらない。なぜ止まらないかというと、これだけ費用を費やしたのにもったいないとか、プロジェクトに関わっている人たちがすでにそこで生活をしているとか、利益が生み出されているとか、そういう理由で一生懸命抵抗する。

たとえば先の戦争もそうですね。負けるとわかっていて突入する。やり出して、負けが込んできても、まだ止められない。原発を広島に落とされてもまだ止められない。ズルズルズルズル行ってしまう。

それから「中海干拓」で起こったことも同じです。僕が新聞記者になって初めて赴任したのは、島根県の朝日新聞松江支局でした。ここには中海と宍道湖という双子の汽水湖があって、ここを干拓する計画が戦後に立てられた。戦後の食糧難の時代だったので、埋め立てして田んぼにして米をつくりましょうという計画だったわけです。ところが、経済成長に伴って食糧難は解消され、逆に米余りになって減反政策が始まった。結局、中海干拓の中止が決定したのは2000年、僕が松江に赴任した年です。1988年の時点で、工事自体は凍結しています。それまでに投じた費用は1000億円近く。何十年も経ってやっと止められる。だから、やり出したら止まらないんです。

最近の事例では、東京オリンピック・パラリンピック。これは記憶に新しいところですね。コロナ禍の中でなぜやるのかわからない、反対の声も上がっているけれど、やると言ったらやるんだと。とにかくそれで邁進していく。脈々と続いているこのような「日本権力ムラ」のDNAを何とかして断たないと、石炭火力発電所の問題、そして温暖化の問題も、どうなるか火を見るより明らかです。このまま進めたら気候変動で大変なことになる、科学的データも出ている、世界中が危機感を抱いている。それでも石炭火力発電を止めらないという、相当に根深い問題だと思っています。

それでは、こういった日本の状況を外国はどういう視点で見ているのか。そのあたりをTansaのリポーター、アナリス・ガイズバートが横須賀の石炭火力発電所の例や、海外の訴訟の例をもとにご紹介します。

世界各国の気候変動訴訟では約6割が原告側の勝訴

Tansaのリポーターのアナリスと申します。私はTansaで国際コラボレーション、英語版の記事やホームページ、SNSなどを担当しています。今年は日本国内の石炭火力発電所の問題について取材をしました。その中で特にケーススタディとして、神奈川県横須賀市でJERAが建設を進めている石炭火力発電所の取材をしています。発電所の建設に反対する地元の住民たちは、国に対して訴訟を起こしました。私はこの取材をきっかけに、気候変動をめぐる世界の訴訟についても調べました

気候変動訴訟は日本ではまだまだ少ないと思いますけれど、世界では約40カ国で2,000件近くの気候変動訴訟が起きています。イギリスの環境研究所の調査結果によると、判決が出た世界の訴訟の中で369件のうち215件は、温暖化対策の強化とか、CO2をたくさん排出する事業の中止を命じるというような、環境を考慮した判決になりました。気候変動訴訟のうち半分以上は良い結果が出たので、少ない人数でも大きな効果を出せる方法といえます。とても戦略的なアクションだと思います。

海外の気候変動訴訟を紹介します。代表的なのはオランダの訴訟です。これは2013年に環境団体によって訴訟が起こされて、2019年に最高裁判所で原告側が勝ちました。その結果によって、政府は気候変動対策を強化しないといけないことになりました。判決の重要なポイントは、気候変動と人権の関係を重視していることで、「オランダ政府は十分な対策をとらないと人権侵害になる」という判決が出ています。

オランダだけではなく、ヨーロッパは気候変動の対策が進んでいるというイメージがあるかと思います。ドイツでは、気候変動への対策を国に求める若者の団体が訴訟を起こし、ドイツ連邦憲法裁判所は「このままでは温暖化のツケを若い世代に回し、自由を侵害することになる」という判決を出しています

あとはアジアの中でも、たとえばネパールでは弁護士が国の対策不足を訴えています。最高裁判所は「政府の対策はパリ協定に違反している」として、新たな法律を制定して気候変動対策をするよう命じる判決となっています。

横須賀市・石炭火力発電所建設と住民たちの反対運動

海外の国々ではいろいろな気候変動訴訟が起きていますが、争点に共通している点はカーボンバジェットというものです。カーボンバジェットという概念は、私も取材をする前は聞いたことはあっても深く理解していませんでした。カーボンバジェットとは、地球温暖化を抑えるために許容されるCO2の累積排出量(※注1)のことです。

世界の平均気温上昇を1.5℃に留めるためには、私たち人間の活動によって今後排出できるCO2量は限定されます。国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)のレポートによると、今のままのCO2排出ペースが続くと、2033年には世界のカーボンバジェットを使い切ってしまうといわれています。つまり、このままでは2030年前半には温暖化が進んで1.5℃を超えてしまう。1.5℃、少なくとも2℃に留めるのがパリ協定の目標で、とても緊急的な問題です。日本の場合、今のCO2排出量が続くと、もっと早く2025年でカーボンバジェットが枯渇すると指摘されています。日本政府は「2050年カーボンニュートラル宣言」を出しましたけれど、2050年では遅いのではないかという話になります。

その中で今、横須賀で石炭火力発電所が建設されています。これに対して横須賀市と近隣の住民が訴訟を起こしました。石炭火力発電所を建設する場合、国は企業に対して、大気汚染など地域に及ぼす影響を評価する「環境アセスメント」を行なうことを定めています。この訴訟で住民は環境アセスを承認する経済産業省に対して、許可の取り消しを求めています。経産省は環境アセスの手続きを不当に簡略化するなど、気候変動への影響に対応していない不誠実な対応をしており、住民側は気候変動によるさまざまな被害も訴えています。原告側の弁護士によると、2022年に東京地裁で判決が出る見通しです。この訴訟の詳しい内容に関してはTansaの記事を読んでいただければと思います。

最後に、渡辺さんが言いましたように、私たちTansaの仕事は市民の寄付や助成金によって支えられていますので、サポートの検討をお願いします。また、メルマガでは記事のリリースなどのお知らせをしていますので、登録もお願いします。

※注1)気温上昇を限度内に収めるための累積排出量に対して、各国が過去に排出してきた量を既消費分として除くと、今後に排出可能な上限量を計算できるCO2の「予算」という考え方


講演2:露木志奈(つゆき・しいな、環境活動家)
「『気候変動の危機は待ってくれない』同世代に伝えたいこと」

露木志奈/環境活動家

2001年横浜生まれ、中華街育ち。15才まで日本の公立学校に通い、高校3年間を「世界一エコな学校」と言われるインドネシアの「Green School Bali」で過ごし、2019年6月に卒業。2018年にCOP 24(気候変動枠組条約締約国会議)、2019年にCOP 25に参加。肌が弱かった妹のために口紅を開発し、Shiina Cosmeticsを立ち上げる。2019年9月、慶應義塾大学環境情報学部に入学。現在は、気候変動についての講演会を全国の中学生・高校生に行なうため、休学中。

「世界一エコな学校」で学んだこと

環境活動家をやっています、20歳の露木志奈と申します。今の私の活動は、全国の小学校から大学まで、学校での講演がメインです。今日はこれから私が今までやってきたこと、環境問題や気候変動に興味を持ったきっかけなどをお話ししたいと思います。

私が最初に環境に興味を持ったのは、「世界一エコな学校」といわれるインドネシアのバリ島にあるGreen School Baliに入ったのがきっかけです。この学校に高校の3年間留学していました。写真は校舎です。建物がすべて竹でできていて、椅子や机も竹でできていて、壁がないのが特徴的です。何でGreen School Baliが世界最先端のエコスクールといわれるかというと、あまり電気を使わなくても、雨の日でも曇りの日でも、室内が明るいという建物の構造もそうですし、あとは教科書もなくてノートもほとんど使わないので紙を使いません。その代わりにパソコンを使うので、パソコンを充電する際の電気なども持続可能なエネルギーのソーラーパネルと水力発電により学校内で自家発電して、電力をまかなっています。

それから、給食の出し方もとてもユニークです。見れば環境にやさしそうだとわかりますが、こんな感じですね[資料p.3]。これ、みなさん何の葉っぱを使っているのかわかりますか? ピザの下に敷いている葉っぱとか、果物の容れ物になっている葉っぱ。そう、バナナの葉を使って、毎日給食が出されます。そうすることによって洗剤を使わず、汚れた葉っぱは土に戻して、肥料をつくってまた新しい野菜、果物を育てます。ゴミが出ないような循環をつくっているのもGreen School Baliの大きな特徴かと思います。

3年間研究をしてつくったナチュラルな口紅

教育に関しては、もちろん気候変動とかクライメート・ジャスティス、クライメート・アクションについての授業はあります。ただ、そうした授業をきっかけに私が環境に興味を持ったというよりは、自分でテーマを選択して研究をしながら授業をつくるプログラムの中で環境について深く学ぶことができました。

私が3年間力を入れてやっていたのは化粧品づくりです。化粧品をつくるきっかけになったのは、妹の肌が弱かったからです。日本でラベルに「ナチュラル」と書いてある化粧品を買って使ったときに、なぜか妹の肌が荒れてしまったことがありました。このとき「言葉の定義って何だろう?」と思って調べていったら、日本で「オーガニック、ナチュラル、無添加」といわれる言葉には、はっきりした定義がないのだとわかりました。だから肌が荒れるような材料が入っていても、信用して使ってしまう。

それと同時に、化粧品業界自体に興味を持ち始めて、もっと深堀りしていきました。どんなことが起きているんだ、と。そして見つけたのがちょっと痛々しい写真なので、グロテスクなものが苦手な方は目を伏せてほしいんですけど、動物実験が行われていることも知りました[資料p.5]。化粧品をつくる場合、新しい成分を開発して、より美しくなるための製品をつくって、それを市場に出す前に人間にとって安全なのかということを動物でまず確かめるわけですね。最近は、世界的な大手化粧品会社でも人工皮膚を使って、より正確な研究データを出すという方法を用いています。にもかかわらず、まだまだ動物実験によって年間50万匹の動物が犠牲になっているといわれています。

それから、もうひとつ目を向けたのが化粧品の容器です。学校の先生が、バリ島にある巨大なゴミの山に私たちを連れて行ってくれたことがありました。それは先進国から送られてきたゴミの山で、私がそのとき見たゴミの中に日本から輸送されたゴミが混じっていたかどうかわかりませんが、日本も処理しきれないゴミをインドネシアを含む外国に送っていることを知りました。ゴミのリサイクル技術が高いわけではない国に他の国からゴミが集められて、こんな状況になってしまっているのかな……と思って調べたら、プラスチックのゴミもリサイクル率は日本でもどこの国でも低い。たとしたら解決策になるようなことをやっていきたいなと思ったんですね。

でも、そんなにすぐに世の中を変えるのは難しい。じゃあ、まずは身近な人のために、私の場合は妹のために、安心して使ってもらえる化粧品をつくろうと考えました。動物実験をしていなくて、プラスチックをなるべく使わずに、本当にナチュラルなものをつくりたいと思って、3年間研究してつくったのが口紅です。容器が竹でできていて、使っている6種類の材料も、すべて天然のものを使っています[資料p.7]。

大きな世界を変えるために小さな世界から変えていく

化粧品づくりを通してわかったのは、大きな世界を変えていきたいなと思ったときに、大きな世界がそもそも何からできているかと考えると、誰か一人が大きな世界を持っているわけじゃない。みんながそれぞれ小さな世界を持っていて、それが集まって大きな世界になっているんじゃないかなと思いました。だから、私はまず小さな世界を変えていこうと思い、全国の小学校、中学校、高校、大学の学校の授業の時間をいただいて、今、世界でどんなことが起きているのか、気候変動ってそもそも何だろうということを、お話しさせてもらっています[資料p.9]。

今は週に6回くらい講演をして、昨日まで栃木県にいました。講演を始めたのは1年ほど前ですけれど、すでに2万人以上の方にお話を届けています。予定は来年の1月、2月くらいまで入っていますが、全国で講演のできる学校は常に募集していますので、ぜひご連絡いただけたらと思います。「露木しいな」でネットの検索をかけると、私のホームページが出てきます。そこにはPDFで「校長先生に直接渡せる資料」として、講演内容とか講演時間とか諸々詳細が載っています。それを使って、講演を希望される生徒や学生の方たちが学校と交渉しやすい形になっているので、チェックしてもらえたら嬉しいです。


講演3:冨永徹平(とみなが・てっぺい、Fridays For Future Japanオーガナイザー)
「気候変動と『静かな暴力』」

冨永徹平/Fridays For Future Japanオーガナイザー

Fridays For Futureに加わり、国の温暖化対策計画を話し合う会議に出席、石炭火力発電輸出への反対アクションなど気候危機対策を求める活動を行なう。日本版気候若者会議の事務局に参加するなど、政治的なアプローチに関心がある。

FFFは気候正義に基づいた対策を求めている

Fridays For Future Japanオーガナイザーの冨永徹平です。僕も20歳で、今日は「気候変動と静かな暴力」というタイトルでお話しさせていただきます。気候変動の問題は「不平等」とか「不公正」とか言われていると思いますが、気候変動に対してどんな対策が必要なのか、どういうふうにおかしいのかということをお話しできればと思います。

まずFridays For Future(未来のための金曜日)について簡単に説明すると、これは2018年にグレタ・トゥーンベリさんがスウェーデンの国会前で座り込みをしたことをきっかけに始まった若者たちによる世界的な社会運動です。気候変動に対して対策が遅すぎるということで、国の政策を担う人たちとか、企業の方針を決める人たちに対して、気候変動に目を向けて対策をとることや、もっと科学に基づいて政策を考えていかないとダメだよね、ということを訴えています。日本でも2019年からFridays For Future Japanの活動が広がっています。その活動の中では、気候正義に基づいた対策を求めていて、今日はそのことについてお話ししたいと思っています。

最初に気候変動の状況ですけれど、パリ協定の1.5℃目標とか2℃目標というのは聞いたことがあるかと思います。気候変動による被害を抑えるために、気温上昇をこれくらいに抑えましょうという数値ですね。そのためには二酸化炭素の排出を2030年までに減らしていかなきゃいけません、と決まっているんですけど、現在の状況がどうなっているかというと、グラフの水色の線が示しています。みんな「CO2の排出を減らさなきゃいけない」と言っていて、日本も「カーボンニュートラル宣言」を出して「がんばっています」と言いながら、本来あるべき数値から全然離れてしまっている。気温上昇1.5℃目標達成のためには、2030年までにCO2の排出を25ギガトンまで減らさなきゃいけないのに、今のままだと56ギガトンになってしまうよ、ということです。

こういう状況に対して僕たちは、このままだと気候変動がもたらす不平等を助長してしまったり、新たな不平等を生み出したりしてしまうからから、ちゃんと対策をとらなければいけないし、対策をとるときも影響を受けやすい弱い立場の人たちのことを考えて対策をとっていかなければいけないよね、ということを訴えています。

気候変動がもたらすさまざまな不平等と不公正

じゃあ不平等というものは何か、具体的に見ていきます。気候変動による被害というと、「台風が増えています」とか、「強い台風が来て地方で被害が出ています」とか、「都市部が水浸しになりました」とか、「南極の氷が溶けています」とか、「森林火災が起きています」とか、それらももちろん被害ですが、もうひとつ奥の部分を見ないといけないと思っています。それは僕が活動をしていて気づかされた部分なんですけれど、IPCCのレポートには気候危機と不平等ということについて「気候変動は、私たちがどこでどのように生活しているかを大きく変える」と書いてあります。さらに、このレポートでは、社会的な地位とか、どれくらい経済的に余裕があるかとか、どこに住んでいるかということが、私たちがどれくらい気候変動の影響を受けて、どれくらいそれに対応できるかという能力を決めてしまう、ということも指摘しています[資料p.6]。

たとえば世界全体でジェンダー間の不平等を見たときに、貧困層のうち70%は女性です。そうなると貧困層の方のほうが干ばつとか洪水とかの被害に遭いやすく、しかも女性のほうが被害を受けやすいということになります。それは男女間の就学率の差と関わっていて、識字率の問題であったり、学校で泳ぎ方を学んでいなかったりで、災害が起きたときに女性のほうが避難が難しく、また避難所に行ったら女性がどう扱われるのか、という問題も考える必要があると思います。また、貧困層の女性は、第一次産業とか水や薪などの資源を集める労働に従事されている方が多く、そうすると自然環境が悪化すれば必然的に直接的な被害を受けることになります[資料p.7]。

経済的な不平等でいうと、気候変動の原因となっている世界のCO2の排出量は、所得の高い10%の人々による排出が半分を占めているといわれています。それに対して貧困層の方々は、これから異常気象が進んだらどうなるかというと、対策ができるだけの経済的な余裕がない。たとえば気温が上昇してもっと暑くなったら部屋のエアコンはちゃんと機能しますか、台風がきたときに家は持ちこたえられますか、断熱はしっかりされていて身を守ってくれますか、ということが大事になってくるわけですが、お金がある人のほうが対策はとりやすい。ところが、お金がなければ対策はとれず、生きていくために必要な環境を整えられないことが大きな問題だと思います。エアコンなんかは、もう生きていくための権利に近いものになってくるかもしれません[資料p.8]。

それと国と国の国家間で見ていくと、地図を見るとわかりますが、気候変動の影響を受けた国々と受けていない国々ではGDP(国内総生産)の差が広がっています。青いほうが気候変動が進む中で経済的にプラスの影響を受けた国、赤いほうがマイナスの影響を受けた国です。歴史的に北半球のヨーロッパの国はプラスの影響を受けやすい。それに対して南半球の国々は過去に植民地化され、非人道的な扱いを受けてきた。そうした途上国は、気候変動によってもマイナスの影響を受けていることが示されています[資料p.9]。

さらに自然環境が悪化したら、農業や漁業に従事されている方は生活が苦しくなります。観光業も台風や豪雨などが増えたら、観光客が減ることが予想できます。多くの途上国の経済は、農業、漁業、観光業に頼っています。そうすると、2050年までに世界中で効果的な気候変動対策をとらなければ、かつて植民地化されていたアフリカ、東南アジア、ラテンアメリカの人々は、気候変動の影響によってそこに住めなくなり、1億5000万人以上が難民になるといわれています[資料p.10]。

それから人種や民族間の不平等もあります。もともと人種の差別は存在していて、たとえばアメリカではアフリカ系やヒスパニックの方の貧困率は高い。そうすると気候変動による被害の程度の格差は広がり、これまで差別を受けてきた一定の人種に被害が偏ってしまうということも考えられます。また、原住民の方々は、国立公園地域に居住している場合もありますが、そういった方々の生活も自然環境が悪化すれば厳しくなるだろうと思われます。原住民の方々は独自の文化、自然と密接した持続可能な生活様式を持っているのに、気候変動によってそういった豊かな文化や言語も失われてしまうのは、地球全体の被害・損失といえるのではないかと思います[資料p.11]。

最後に世代間の不平等。現在も世代間の経済的な格差や不平等は問題になっていて、それが気候変動の悪化によってもっと大きくなったら大変だよねというのは、もうすでに普通にいわれています。自然環境がどんどん悪くなって、将来僕たちにツケが回ってくるとか、食べ物もなくなるのだとしたら、変えていかなきゃいけないよねということは必然的に考えられると思います[資料p.12]。

知恵を出し合って社会の大きなシステムを変えていく

こういう不平等の問題を発信して、メディアの取材を受けるときに「もっと身近なところから始めればいいじゃないか」といった意見をいただくことがあります。それもひとつ正しいなと思いますが、「身近なところから始める」のも必要な一方で、それだけでも変わらなくて、もっと全体のシステムを変えていかなくてはいけないと思っています。僕たちがビニール袋を使わなくなったら世界がすぐに変わるわけではなくて、もともとビニール袋を使わないようにしようと思って実行していた若い世代の人たちがFridays For Futureに集まっている。だからFridays For Futureは、自分たちの知識や知恵を出し合って、大きなシステム全体に対して活動していこうとしている場所です[資料p.14]。

もうひとつ最後にエネルギーの問題について付け加えると、原発廃止も気候正義の一部です。CO2を排出しない原発は気候変動対策になるといわれていますけれど、多くの問題点を抱えています。気候変動の対策をとるために、原発で働く人たちや、地元の人たちにしわ寄せがいってしまうのだとしたら対策をする意味がない。僕がふだん使っている電力が原発でつくられているのは嫌だなと思うので、原発にも反対しています[資料p.15]。


ディスカッション(進行:abt星川淳)

星川:渡辺さん、アナリスさん、露木さん、冨永さん、プレゼンテーションをありがとうございました。ここからは事前にいただいた質問と、チャットに上がってきた質問に4人の方からコメントをいただきながらディスカッションを進めていこうと思います。まず事前にいただいた質問の中のひとつに僕からお答えすると、そもそも「地球温暖化というのはどうなのか、温暖化が進んでいるという認識が正しいのか」という問いがありました。IPCCの最近のレポートを読むと気候変動の状態を把握できますが、このイベントは、温暖化は間違いなく進行しているという前提のもとに開催しています。それについて知りたい方は、『地球温暖化懐疑論批判』(IR3S/TIGS叢書No.1)という冊子が出ています。これは日本の代表的な研究者たちが懐疑論に対する反論をまとめたもので、ネットにもPDF版が上がっていますので、これを読んでいただくとよくわかると思います。

それでは最初の質問です。渡辺さんに対して、「日本は環境問題に関心が薄いといわれるけれど、環境問題を伝えるためにメディアを変えるにはどうしたらいいでしょう」という質問がきています。

渡辺:難しいですね。メディアを変えるといっても、現時点ですでにメディアは壊れていっているので、従来の新聞社、テレビ局、マスメディアの体制をどう変えるか。そのマスメディアの体制というのは、明治以来、記者クラブを中心として政府や当局と一体となって報道が行われてきました。もちろんその間、いい仕事、いい報道もされてきましたけれど、トータルとしては明治時代から戦前、戦後と続いている記者クラブ、大本営体制みたいなものが今まさに終焉しようとしているわけです。それはどこも経営状況がめちゃくちゃ悪いので、大手新聞社だって5年後に今の形で残っているところはどれだけあるのか。

今後、そういったマスメディアの体制は壊れて、一度ガラガラポンになると思います。だから、ガラガラポンになったときに立ち上がっていく、戦後の焼け野原からバラックを建てて、みんなでやっていこうというところで、だれがバラックを建て出すのか、そしてそれを応援する人はいるのかということが大事です。

僕もそこをめざしてTansaを立ち上げたわけで、ポイントになるのは市民やNGOとの協同作業ではないかと考えています。星川さんにも以前、「そこが新しい」と言っていただいたのですが、それは狙ってやっているんですね。なぜかというと、これからメディアは市民に情報を与える側ではなく、市民はお客さんとして情報をもらう側ではなく、ジャーナリズムを一緒に育てる、一緒につくっていくべきだと思っています。お客さんと企業の関係ではなくて、市民がジャーナリズムを支える関係が日本でできるかどうかが、メディアが変われるかどうかにかかっている。

世界的に見れば、Global Investigative Journalism Networkという国際組織があります。これはTansaと同じく非営利組織で、探査報道を促進していくニューズルームのネットワークなのですが、世界に82カ国、211のニューズルームがつながっています。すでにひとつの巨大な動きになっているんです。日本でニューズルームとして加盟しているのはTansaだけですが、こういうグローバルなメディアの流れも生まれている。ですから、これからは日本のマスメディアをどう変えるかというよりも、形がなくなってきて焼け野原になったところに何を築くかということがテーマになっていると思います。

星川:Tansaは焼け跡でいち早くバラックを建て始めたというところですね。数年前になりますが、アクト・ビヨンド・トラスト(abt)の中から、環境運動や社会運動をやっていても、メディアが弱すぎて問題を問題として扱ってくれない、何とかメディアを応援しようという意見が出ました。そこでabtとは別に「ジャーナリズム支援市民基金」という任意団体を立ち上げて、2年前から「ジャーナリズムX(エックス)アワード」の公募を開始しています。実はTansaの前身のワセダクロニクルは、第1回「ジャーナリズムXアワード」の大賞をとりました。ですから、Tansaは焼け跡フロントランナーといってもいいかもしれない。アナリスさんからは、メディアの話について補足はありますか。

アナリス:自分の経験をいうと、私は、国際コラボレーションの取材を担当しています。探査報道は時間と手間がかかるといわれていますが、海外の記者から情報の共有を受けて、自分だけでは得られない情報をもらえる仕組みになっています。だから、コラボレーションという形もジャーナリズムの将来を担うのではないかと思います。

星川:今のお話に補足すると、民主主義の仕組みとして国家の権力を三つに分けた司法権・行政権・立法権の三本柱がありますが、ジャーナリズムは第四の権力といわれてきました。三権の外側から国が民主的な正しい働きをしているかどうかを監視してチェックする役割があるわけですね。

ただし僕の感触でいうと、第四権はNGOやNPOの市民セクターとジャーナリズムが分担して成り立たせるものだと思っています。その中の役割の違いは、ジャーナリズムは現場に行っても手を出さずに報道する。NPO、NGOは現場に行って手を出す、支援をする。役割は違うけれど、これからはその役割の境目も融通があってもいいんじゃないか。今日のお話の中で、そのあたりも参考にしながら聞いてください。

次は若いお二人にお聞きしたい質問で、気候変動の「ティッピング・ポイント(臨界点・転換点)は超えたんですか」と。これについて、冨永さんはどんな認識でしょうか。

冨永:「わからない」という話を伺っています。「わからないから怖い」と聞いています。

星川:ティッピング・ポイントは、ここから先に行くとドンと進んでしまうポイントで、今はまだはっきり超えたということではないのだろうけれど、いろいろな現象がティッピング・ポイントの引き金を引くといわれてきました。そのひとつが北極圏のツンドラで、これが動き出すとまずいとされ、もう動いているわけですね。ツンドラが溶けて、湖みたいに広がっている。ロシアとかアラスカでは、森の中に穴が開いて水が溜まり、底からメタンガスという二酸化炭素の21倍も温暖化効果があるガスが出てくる。そうなると、さらに温暖化に拍車がかかる。海洋の二酸化炭素の吸収能力とか、海水温の上昇とか、ティッピング・ポイントの引き金を引く現象が現われているので、相当やばいぞとはいえるのではないでしょうか。

次の質問は、露木さんに答えてもらえるかと思います。露木さんが小学生・中学生にお話をする中で、Tansaが報道している石炭火力発電とか、「やめて」という反対の声が多いのに日本の政府や業界は「やる」と言っている原子力発電とか、そういう電力が「なくなると困るんじゃないの、やっていけるんですか、と子どもたちから聞かれますか」という質問があります。

露木:まったく聞かれないですね。小学校や中学校では、そもそも「気候変動って何?」という人たちに話をするので、そこまで詳しい話はもちろん知らない。私は全然、そういう話はしていないし、聞かれることもほとんどないです。

星川:もうひとつ、こちらの質問はどうでしょうか。環境正義とか気候正義を実現するために、世界中の若者たちが政策を変えてほしいと訴えていますね。その他に「自分にも暮らしの中でできる気候正義があると思うが、どのように考えますか。有効な提案があればお聞きしたい」という質問がきています。

露木:暮らしの中で環境のためにできることですね。私は世界と日本の差は何なんだろうと考えたときに、まず情報の差だと思うんです。日本では何が起きているのか正しい情報が伝わっていないし、そもそも情報そのものが入ってきていないという状況があるので、伝えていきたいなと思って学校で話をしています。

その次に何が必要なのかというのは、個人で変えていける部分で、簡単にできてインパクトがあるのは家庭の電力を再エネに変えるのがいちばんかなと思います。再エネといってもいろいろな種類があって、小さな規模で発電をしている電力会社もあるから、うちの電気もそうですけれど、そういうところから使えるものは使っていく。再エネで発電している電力を供給している電力会社を選んでいくと、家庭からの二酸化炭素の排出量は減る。そういうところからやっていくのが、今までの生活を変えずにできることなのかなと思いますね。

あとはチャットに選挙のことを書いてくださっている意見がありますが、私が講演をしている生徒・学生は投票権がない人がほとんどです。でも、気候変動に対する対策を進めるために、政策を変えるために個人ができることとして投票の話はしていますし、「18歳になったら、とにかく行ってね」と言っています。投票は大事かなと思います。政治は社会を変える力があるけれど、10代、20代の人は選挙に行かないから票にならないし、政治家が若い人に訴えかけることはあまりないじゃないですか。だから「選挙に行こうよ」ということは伝えていかなきゃなと思って、講演でも言っていますね。

星川:この質問について、冨永さんから何かありますか。環境正義、気候正義の視点で、身近でアクションできることという意味でどうでしょうか。

冨永:すぐにできることでいったら、たとえば肉を食べる量を減らすとかだと思います。それと人の考え方みたいなことでいうなら、自分の考えを深めるのも大事だと思っています。考えを深めるのは直接行動ではないように見えますが、自分の考えが変わったら行動も変わるし、人に伝えるときのしゃべり方も変わるし、人に伝わる内容も変わってくる。志奈さんが言ったように、情報を得るためにいろいろなものを読んでみたり、自分にとって心地いい場所からちょっとだけ出て、ネットに上がっているグロテスクな環境破壊のシーンを見るだけでも、見えるものが変わったり、考えが変わったりするのではないかなと思います。

もうひとつ投票ということでは、僕が一緒に活動をしているメンバーでも選挙権をまだ持っていない人がたくさんいます。僕たちは被選挙権も持っていないし、選挙権を持っていても一票を入れるという間接的な方法でしか自分たちの意思を伝えられていないと思うんですね。さらに言ってしまうと、若者は高齢の方より人数は少ないので、若者が全員投票に行っても、たぶん僕たちの意見はあまり政治に反映されない。僕たちの人数は高齢の方たちの何分の一くらいなので、投票に行けばOKとはいえない。若者に本当はやってほしいのは、ちょっとハードルが高いと思うんですけれど、署名運動とかもう一歩進んでできることが実はあるというのは、もっと伝えていきたいなと思っているところです。

星川:そのあたりは、少し上の世代の渡辺さんやアナリスさんから見るとどうですか。

渡辺:全体的に、若い人たちがもっと怒ったほうがいいと思います。今の若い人たちはかなり損をしている。この前聞いて驚いたのは、僕が大学に通っていたのは98年までですけれど、それに比べて大学の学費が倍近くなっているんです。僕が大学生だったとき、早稲田ですけど5~60万円だったと思いますが、今は年間100万円を超えるでしょう。昔、僕より上の世代は、学費値上げ反対闘争をやっていました。当時は学費を上げようものなら大変な騒ぎになって、警官も出動した。ああいうやり方がいいとは思わないけれど、あの世代の人たちは自分たちが年をとったら気候変動問題だけに限らず、いろいろな負担を今の若い世代に押しつけているわけですよ。かなりなめているというか、なめられているということに若い人は気づいてほしいですね。

横須賀市の石炭火力発電所の例でいうなら、なぜ小泉進次郎・元環境大臣が自分の選挙区に大量の二酸化炭素を排出する石炭火力発電所を建設することに何も言わないのか。小泉さんに近い人、自民党の関係者に取材をすると、彼が何て言っているかというと「発電所前で反対運動をやっているけれど、人はたくさん集まっていないし大丈夫だろう。事務所にも反対の電話やメールが来たりすることはない」と。反対運動は一部の住民がやっているだけで、大勢に影響はないとタカをくくっているわけです。小泉さんは環境問題に取り組む若者たちと意見交換をして、若者たちに「いい活動をされていますね」とニコニコしながら言っていますが、裏で考えていることは全然違うので、騙されずにもっと怒ったほうがいいと思いますね。

アナリス:選挙のことでいうと、まだ選挙権がない若者でも、裁判所では自分の意見を訴える権利があります。たとえば横須賀市の石炭火力発電所の裁判ではいろいろな年齢の方が参加していますけれど、10代のティーンエイジャーも原告団に入っています。あとは海外の例を見ると、韓国やドイツの気候変動訴訟は原告団が全員若者で、10代と20代の若者が政府に対して訴訟を起こし、ドイツでは若者の原告団が勝訴しています。世界では良い結果も出ていますので、海外の事例を学んで日本でも同じことができないか、若者たちに考えてほしいですね。

星川:訴訟はハードルが高そうだけれど、熱い思いで協力してくれる弁護士もたくさんいるので、若くても参加できるし行動を起こせる。いろいろな年齢層の人が一緒になって動くと、結果が出そうな気がします。

冨永:僕も、若者が当事者として声を上げることはすごく大事だと思っています。でも、じゃあ若者が声を上げなくてはいけないのかというと全然そんなことはなくて、もちろん気候変動によって将来、被害を受ける若者が声を上げたほうがいいけれど、僕自身もCO2を出しているし、被害者であり加害者でもあると思うんですね。それって若者と大人と分ける必要はないし、すべての世代が加害者であり被害者であると思います。気候変動は昔から危ないといわれていて、その可能性は70%、90%と言われていた時期があったわけです。今はほぼ100%という言い方に変わりました。ここに至るまで、具体的な対策や行動はしてこなかったということを考えると、むしろ僕たちより上の世代の方々により大きな責任があると思います。それなのに、今「若者が行動しなきゃね」と言われると、責任転嫁されている気持ちにもなるんですね。

正直、僕はそこにもすごく怒っていて、明日、政治家の方たちと討論会を開くんですけど、その討論会の準備は中高生と僕が進めたんです。僕が20歳でいちばん年上で、準備を進めているけれど、他の大人の方たちがどれくらい気候変動の討論会を具体的にやっているのか。気候変動に対策をしない大人に対して若者は怒っているのに、その大人たちから「すごいね、がんばっているね」と言われて、小泉元環境大臣も「若者の環境活動を応援します」と言っていました。僕たちの目的は政治や政策を担う人の考えを変えることなのに、彼らがそんなことを言い出したら本末転倒ですよね。そういうことに怒りきれていない自分にもイライラするんですけれど、気候変動の問題を俯瞰して見ているような、この地球にいないような視点からこの問題をとらえている人がすごく多いなと感じていて、もどかしいしイライラしているところです。

星川:グレタさんの言葉からもそういう気持ちが伝わってきますね。「わかっているならあなたが動けよ」ということですね。他にもたくさん質問やご意見をいただいています。「電気水道のないアフリカの田舎に住んだ経験がある」という方からです。「電気水道が完備してエアコンが効いた快適な家で暮らしていて、この快適さを手放すことのできない私たちに何ができるのかと思うことがあります。私たちの生活を見直す必要があるのではないでしょうか」というご意見をいただきました。

僕は20代の後半にアメリカで電気・水道・ガスのないところに1年間暮らしたことがあって、日本に帰ってきたときに過剰なモノに囲まれているなと思いました。そこで感じたのは、過剰なモノが溢れている日本が100で、電気水道ガスのないところが0だとしたら、日本にいても自分が積極的にダイヤルを合わせればいい、パーセンテージを選べばいい、ということです。選ぶための情報もないし経験もないということが問題なのかなと感じたりして、日本でもダイヤルを低いところに合わせ、でも快適さを犠牲にしない暮らし方をしています。この「私たちの生活を見直す必要があるのではないでしょうか」というご意見について、どなたかコメントがあればお願いします。

冨永:僕一人が森に住み始めたら気候変動が解決するなら森に住みますけれど、僕がそれを始めてどれだけたくさんの人の共感を得られるか。肉を食べる量を減らすとか、僕の家はまだですけれど電気を再エネに替えるとか、そういうことはやったほうがいいと思いますが、それが全体にどう広がっていくかというと、それだけでは変わらないと思っています。それだけで変わらないからこそ、社会のシステムをつくっている人たちに対して、レジ袋を有料化するだけではなくて、もっと対策を進めてほしいし、電気自体をもっとクリーンなものに変えていってほしいと訴えています。僕の中では、生活を見直すと同時に全体的な構造を変えていくことが重要な問題になっています。

星川:身近でできることプラス、システム・チェンジの必要性ですね。むしろ今はシステム・チェンジが欠かせないんじゃないかという議論になってきています。

渡辺:ライフスタイルを変えて、新しい価値観で暮らしていくことは大事だと思います。ただ、いきなり0か100かと問われても急にできるものじゃない。そこで必要なのは「電気がなくなったら森に住むしかないんだぞ」という言われ方をしたときに、本当にそうかどうか、ちゃんと数字を見て確かめたほうがいいと思っています。

なぜこの話をするかというと、民主党政権で福島第一原発事故後の処理をした仙谷由人さんに取材をしたときに聞いた話に疑問を感じたからです。仙谷さんは3年前に亡くなりましたが、取材に対し原発事故を振り返って「あのとき俺が何を考えたかというと、首都圏をブラックアウトさせちゃだめなんだ。東電が潰れてブラックアウトしたらどうするんや」と言うわけです。だけど、ブラックアウトなんて起きないんです。事故の後、原発が止まっている間にしばらくメディアは、東京電力や中部電力の管内で「今日のMAX電力量」みたいな報道を毎日やっていた。あれはいつの間にかやらなくなったけれど、あれで「やばい」と思った日はなかったですよ。だから、当時の政権も東電も嘘をついていたなと思います。そういうことを考えると、ライフスタイルを変えつつ、具体的に数字を見ていく。「原発や石炭火力発電を止めたら電気を使えなくなるんだぞ」と、そういう論法でこられたときに、ちゃんと科学的に数字で判断をしていく。それをやりながらライフスタイルを見直すようにしないと、森に住むか、電気を使いまくるかみたいなところにいけば、政治家の思う壺かなと思いますね。

星川:それでは最後に、露木さんからも何かありましたらお願いします。

露木:私からは、メディアの話でつけ加えたいのですが、マスメディアというのはスポンサーがついていたりして報道できない内容があって、いろいろなものに左右されていると思うんですね。でも、今は大きなメディアだけではなく、若い人たちが個人でやっている小さなメディアがいっぱいある。そういうものを最大限に活用することこそが、よりインパクトがあって変わっていく方法なのかなと思っています。若い人の間ではインフルエンサーもすごく影響力があるし、大きなメディアよりも、みんなTikTokとか、インスタグラムとか、ツイッターとかを見ている。だからこそ、若い人が変わっていくには、SNSの活用というのも大きいのかなと思います。

私もインスタにたくさんフォロワーがいるわけではないけれど、環境の問題は地道に発信し続けています。それと、ネットを通して伝えきれない部分とか、思いとかは直接のほうが伝わりやすいと思っているので、教育現場である学校という場を選んで講演をしています。小学生もすごく興味を持って話を聞いてくれたりするので、なるべく小さい頃から伝えていくのも大事かなと思っています。

星川:露木さん、渡辺さん、アナリスさん、冨永さん、ありがとうございました。