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2019 年度 「ネオニコチノイド系農薬に関する企画」公募助成成果報告会(web版)

2013年度から毎年、都内会場にて一般公開という形で成果報告会を開催してきましたが、2019年度は2020年初頭からの新型コロナウイルス感染拡大に伴い開催を中止し、web上での成果報告といたしました。各助成先が1年間の成果を、スライドとテキストにまとめたものを掲載しています。






NPO法人河北潟湖沼研究所


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企画名:平野部の水田ではネオニコを使う必要が無いことを証明し見える化する


今回の事業では、公募により市民が参加する水田調査を実施することができ、特に、ネオニコチノイド等の浸透性殺虫剤のラジコンヘリによる空中散布(以後ネオニコ空散または空散)前後の陸生動物の変化を、空散を行なった水田と行なっていない水田とで比較することにより、空散の影響を参加した市民とともに実感することができました。


調査結果として、ネオニコ空散の目的であるカメムシは、いずれの水田でももともと被害を与えるほどには生息しておらず、逆に空散を行なうことで天敵が減少し、害虫が増える傾向があることが明らかとなりました。空散を行なった水田では、クモ類の数が減るととともに大きなクモがいなくなることがわかり、ネオニコの影響で直接クモが死ななかったとしても、クモの餌となる種が減ることにより、クモが小型化し数も減ってしまうことが考えられました。


河北潟周辺の田んぼの空散マップを作成したところ、空散を行なわない田んぼが増えていることが明らかとなりました。また、農家への聞き取り等により、農家は何が何でも空散を実施しなければならないという強い思いを持っているのではなく、習慣的に実施しているだけであり、問題があるのであればやめても良いと思っている人が多いのではないかと思われました。同時に、ネオニコの問題について把握していない農家が多く、空散の場合は特に自分で散布するわけではないので、あまり関心事になっていないことがわかりました。


調査結果のアンケートからは、ネオニコのことを知らない人が圧倒的に多いこと、まだまだ広報が足りていないことが実感されました。しかし、同時に同封した調査結果のパンフレットを読んで意識が変わったと答えた方も多く、このパンフレットが、ネオニコが水田で使われることの問題に関心を持つ人を増やす上で有効なツールであることがわかりました。


プロモーションビデオについては、調査結果に基づくネオニコと水田の生物との関係についてわかりやすく説明していますので、多くの方に見ていただきたいと思います。


【動画】浸透性殺虫剤について考えよう――カメムシの少ない田んぼに浸透性殺虫剤は必要ない
» https://youtu.be/dnPrkpPZ3pM(日本語版)
» https://youtu.be/8Wdv5tRhPV4(英語版)


【動画】変わる田んぼと生きもの、人の暮らし
» https://www.youtube.com/watch?v=sfzsJeZwKWY(日本語版)
» https://www.youtube.com/watch?v=iJZpkt1VTgw(英語版)


【調査結果パンフレット】
カメムシのいない平野部の田んぼで、ネオニコチノイド系農薬など浸透性殺虫剤は必要?
田んぼの生きもの調査から考えよう
» http://kahokugata.sakura.ne.jp/pdf/pamph/tanbocyousa202001.pdf


7月28日調査風景
8月4日調査風景
12月22日シンポジウム





千葉工業大学 都市環境工学科 亀田研究室


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企画名:ネオニコチノイドによる水生生物への生態リスク比較~作目種及び散布方法による影響~


ネオニコチノイド系農薬は、さまざまな農作物に応じてその散布量や散布方法が異なるとともに、散布する栽培土壌の特性も大きく異なる。そのため、栽培地から河川や用水路、ため池へのネオニコチノイド系農薬の流出特性も異なることが考えられる。しかし、国内のネオニコチノイド水質基準は栽培種を加味していない。そこで、お茶栽培流域、ドローンによる空中散布が行なわれている水田流域、空中散布が行なわれていない水田流域およびイチゴの栽培地付近、合計4種類の栽培地域周辺の用水路、河川、ため池および公園の池のネオニコチノイド濃度の調査とそれによる水生生物への生態影響リスクを評価した。


調査は2019年4月~8月まで、静岡県(お茶栽培)、埼玉県(水田)、千葉県(空中散布水田およびイチゴ)それぞれの地域について、栽培地域の河川、用水路、ため池、市街地公園、約10地点で実施した。水質調査は、採水による採水日の水質調査とパッシブサンプラーによる一か月間の平均推定濃度で実施された。対象ネオニコチノイド系農薬は計10物質とし、液体クロマトグラフィータンデム質量分析計で微量分析を行なった。


調査地域別ではお茶栽培地域周辺が最も検出濃度が低く、10種合計濃度で0.1~7.4 ng/Lと極低濃度だった。豊富な清澄な湧水による希釈効果や栽培土壌の透水性の良さが原因と考えられた。一方、空中散布後の著しい濃度上昇は検出されなかったが、埼玉県では0.7~89.5 ng/L、千葉県では0.3~87.9 ng/Lが検出された。最も高濃度で検出されたのはイチゴ栽培地付近の用水路で36.3~133 ng/Lだった。また、ネオニコチノイド類が直接散布されていないと思われるため池や公園の池でも用水路や河川と同様、あるいはそれ以上の濃度が検出された。これらの濃度は国内の水質基準未満であったが、海外で提案されている基準値と比較すると、51調査データ中18データが基準値を超過し、水生生物への悪影響が懸念される結果となった。


調査地点写真:ため池の例
調査地点写真:一級河川の例
調査地点写真:用水路の例





辻野 兼範


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企画名:ネオニコチノイド系農薬が佐鳴湖の生態系に与える影響調査


ネオニコチノイド系農薬(以下ネオニコ)は神経毒の一種の殺虫剤で、わが国では使用の規制はなく広く使用されている。他方、EUなど先進国ではネオニコは害虫だけではなく非標的生物(益虫など害虫以外の生物)も殺虫するので、生態系への影響を危惧し使用を禁止、規制している。先進国の中で日本はネオニコの使用規制が緩く調査も不十分で、そのため認知度も低く、国民が日常的に使用していることも知らないのが実情である。


佐鳴湖および流域ではネオニコとフィプロニルの実態調査はされていない。そこで分布や濃度を調査し、地域住民に報告し、啓発活動を行なうことを目的にした。


調査の結果、流域の5河川と佐鳴湖からネオニコ7種類のうち5種類とフィプロニルが検出された。検出量が多いのはチアメトキサム、イミダクロプリド、アセタミプリドで、静岡県で出荷量が多いのはジノテフラン、イミダクロプリド、クロチアニジンの順で、河川ではジノテフランは夏に多量に検出されたが他の時期には少なかった。検出されなかった成分はニテンビラムとチアクロプリドで、出荷量も少なかった。


河川流域の土地利用をみると、田畑の割合が30%ある河川でネオニコの濃度が高く、春から夏にかけて水田で使用する時期と一致し、農薬の影響が明らかとなった。今後は河川の昆虫などの水生生物の調査をしてネオニコの影響を調べる予定である。


佐鳴湖の湖底の底生動物は2000年以降生息数が減少している。この時期はネオニコが普及する時期であり、底生動物の減少がネオニコの影響かどうか詳細に調査し検証する必要がある。佐鳴湖水のネオニコは低濃度であるが、浸透性殺虫剤に関する世界的な総合評価書によると、水生無脊椎動物の95%を保護するためのネオニコ濃度の平均は35ng/Lと低濃度である。ジノテフランは全ての流域河川と佐鳴湖で35ng/Lを上回り、最大値は114ng/Lと高い値であった。佐鳴湖流域のネオニコの濃度は、規制を実施している海外では長期間の曝露で問題にされる濃度である。


佐鳴湖流域の住民が参加する「佐鳴湖交流会」で今回の調査結果と日本のネオニコの問題について報告・説明すると参加者への関心が高く、今後も問題を共有し、日本も他国並みにネオニコの使用を規制するように訴えかけていきたい。






苅部 治紀


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企画名:ため池や自然止水域におけるネオニコチノイド系農薬の汚染状況と絶滅危惧水生昆虫の生息状況の相関調査


本研究では、近年減少が目立つ水辺の昆虫類の中でも、トンボ類やゲンゴロウ類などの止水性絶滅危惧水生昆虫を対象にした。調査では、現存産地と絶滅産地のそれぞれにおける各種の生息現況をモニタリングし、同時に採水を行ない、検体からネオニコチノイド系農薬(以下本薬剤とする)の調査を実施した。結果としては、14県58地点から122サンプルを採取し、そのほぼすべての118サンプルから何らかの本薬剤が検出された。


このうち環境基準値を超えたのは10サンプルで、いずれもフィプロニルであった。今回、北海道から沖縄まで広域に調査を実施したが、水田のない地域の池沼、周囲に農地の存在しない池沼からも本薬剤が検出されたことは、地下水などを通してすでに広域に環境下に存在することが示された。


絶滅危惧種の生息と本薬剤の検出との相関は、まだ今後の調査が必要であるが、絶滅危惧種の健全な現存産地では本薬剤はフィプロニル以外は検出されない事例が多かった。今回の調査での薬剤の検出頻度は地域差も大きいが、クロチアニジン(48サンプル数 以下同)、ジノテフラン(36)、チアメトキサム(30)、イミダクロプリド(22)、アセタミプリド(20)、ニテンピラム(3)、チアクロプリド(3)となった。


本研究によって次のような結果が得られた。


  • 本薬剤は、国内広域に水域を汚染している実態が明らかになった。
  • 絶滅危惧種の現存産地でも、本薬剤汚染を完全に免れた場所はほぼ存在しない状況であり、近年報告されている絶滅や個体数の減少は本薬剤が原因のひとつである可能性も視野に入れるべきである。
  • これまで見た目の環境変化がほとんどない産地での個体数減少は説明が難しかったが、本薬剤の汚染による可能性が示唆できるようになった。
  • 絶滅危惧種保全上も、外来種の侵入や植生遷移など他の要因で環境が劣化した水域の環境再生事業の優先順位つけの際も、農薬汚染実態の把握は有効である。

一方、農薬汚染の原因薬剤は多岐に渡っている可能性が高く、今回得られた結果は、本薬剤以外は調査しておらず、絶滅危惧種の減少要因には、他種の殺虫剤や除草剤などが寄与していることも念頭に置くことは重要であると考えられる。


今後、本薬剤が検出された産地の経年調査や、調査対象種の農薬毒性試験や複数薬剤による影響などが進行すれば、本薬剤による環境影響がさらに明らかになると期待される。