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トップページ コラム 【abt徒然草】 #13「環境キャリアから見えてきたもの(2)」

アクト・ビヨンド・トラスト(abt)のメンバーが、日々感じたことを徒然に綴る「abt徒然草」、第13回目は、アシスタント・プログラムオフィサーの美濃部真光です。

abt徒然草#3「環境キャリアから見えて来たもの(1)」では、日本の環境NPO/NGOの活動が盛んになってきたのは、1992年のリオサミットや1997年の気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)「京都会議」ではないかと書きました。

廃棄物や化学物質等による環境汚染がニュースで毎日のように報道されていたその時代、私はまだ中高生で、リオサミットやCOP3には参加していません。おそらくは環境問題を一刻も早く解決して持続可能な社会を作らなければならないという多くの先達が集まり、その熱気たるや凄まじいものだったのではないかと想像します。

そのような国際会議を機にして、数多くの環境NPO/NGOが生まれていきました。1990~2000年には723団体、2000~2010年には1,675団体が設立されています。

熱いミッションを掲げる団体や創設者たちは、多くの人の目にキラキラと輝いて見えたことでしょう。リオサミット以降、様々な環境問題解決に取り組む団体が、たくさんの市民ボランティアを巻き込んでムーブメントを起こしてきました。

ところで、組織経営や人材コンサルティングの分野では、人を3つのタイプ「ビジョン型」「ミッション型」「バリュー型」に分けて語られることがあります。人材コンサルティング的には、この手のタイプ別分析はいくつかあるのですが、今回紹介する分類法は「自身のモチベーションを上げていく方法分類」と理解しています(人によって捉え方は色々あると思いますが)。

◆ビジョン型
独自のビジョンを持ち、それに向かって突き進んでいるという実感を得ることで、モチベーションを上げていくタイプ
◆ミッション型
他者から自身の存在・役割を必要とされるという実感を得ることで、モチベーションを上げていくタイプ
◆バリュー型
自身の長所・能力が活かされているという実感を得ることで、モチベーションを上げていくタイプ

どれが優れているというわけではなく、自分のモチベーションを持続的に引き上げていくには、どのような姿勢が合っているかということです。それは翻せば、自分の思考の癖のようなものです。

話を戻しますが、NPO/NGOに限らず、何かの事業を起こす人(起業家)は「ビジョン型」の人が多いでしょう。おそらく1990~2000年代初頭、環境NPO/NGOの業界には、そのような人が溢れていたと想像できます。その時から20年以上が経ち、創設者たちは老い、次世代へ引き継がなければならない時代がやってきています。幸いにも、各団体にはボランティアを経験した、団体のミッションに共感する人たちが在籍していました。

先達から引き継いで、次の世代を担おうという人たちには「ミッション型」の人が多いのではないでしょうか。みんなから必要とされ、尊敬する先達のもとで憧れの仕事に携われるのであれば幸せです。またボランティアの中には、ファシリテーター、ファンドレイザー、経理や法務など特有の能力を持つ人も関わってくれるようになりました。その人たちは「バリュー型」なのかもしれません。自分の能力が役立つのであれば嬉しいし、それを仕事にできるのであれば最高です。しかし、「ミッション型」の人と「バリュー型」の人は、そもそも独自のビジョンを作ることが不得手です。所属しているNPO/NGOのビジョンはあるけれど、個人のビジョンがないという人が多いのではないでしょうか。

2005年から環境分野の助成金のプログラムオフィサーとして活動してきた者として、環境NPO/NGOの組織基盤上の課題の根本原因は、個人のビジョンを持たず、ビジョンを作れない次世代が多いことにあるのではないかと思っています。

ビジョンを作れる人を育てるにはどうすれば良いのでしょう。abtを含め、日本の市民社会が今後取り組むべき重要課題のひとつとして、皆さんと一緒に考え続けたいと思います。