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助成先活動情報

哺乳類におけるネオニコチノイド農薬の神経毒性発現の仕組みが見えてきた!
イミダクロプリドによるアドレナリンを産生する副腎髄質細胞の機能撹乱

2016年度公募助成の企画「哺乳類末梢・中枢神経系におけるイミダクロプリドの神経毒性に関する薬理学的研究」の成果が、学術誌『Toxicology』に掲載されました。東北大学大学院薬学研究科で山國研究室を率いる著者の山國徹准教授に、この論文の内容について簡単な解説を寄稿いただきました。
 

「哺乳類に安全」という観察は十分か?

ネオニコチノイド農薬であるイミダクロプリドは「ヒトを含む哺乳類で安全である」と信じられてきた。それは、この農薬が作用する昆虫及び哺乳類の神経型ニコチン性アセチルコリン受容体タンパク質をカエルの卵母細胞などで発現させ、この薬物で処置すると、細胞内に流れ込むナトリウムイオンやカルシウムイオンの量に両者で大きな違いがあるからである。すなわち、イミダクロプリドを各々のニコチン性アセチルコリン受容体に晒すと、昆虫の受容体と比べてヒトの受容体では極めて微量しか陽イオンを通さないことが根拠になっている。しかし、この実験ではイオン流入量しか測定していない。しかも、ここでの観察時間は1分以内である。

実は、私たちの体の細胞の中では、通常アセチルコリンがニコチン性アセチルコリン受容体と結合し、その結果、発生するイオン流入が引き金になって、様々な生化学反応が連鎖的に起こる。そして、最終的には細胞機能にまで影響が及ぶことになる。つまり、イミダクロプリドの細胞への影響を正確に捉えるためには、測定ウィンドウをもっと拡げて、このイオン流入後に発生する細胞内イベントを精査することが不可欠である。また、毒性学的には、哺乳類でのイミダクロプリドの毒性は低いとされているが、生体内の個々の細胞レベルでの安全性を全面的に担保するものではない。事実、半数致死量よりはるかに低用量のイミダクロプリド長期投与実験から、哺乳類における神経毒性の証拠が報告されている。
 

イミダクロプリドが哺乳類のアドレナリンを増やす仕組みがわかった

血液中のアドレナリン濃度の上昇は高血圧や不整脈などの原因になる。哺乳類の末梢神経系では、アドレナリンは主に副腎髄質細胞で生成される。この細胞は神経型ニコチン性アセチルコリン受容体をもつ。本来は、アセチルコリンがこの受容体に結合して、アドレナリンの合成や血液中への分泌を促す。本論文では、ラット副腎髄質由来株細胞とラット副腎髄質クロマフィン細胞を培養して、イミダクロプリドで処置し、24時間及び48時間後に細胞内で起こる様々なイベントを捉え、その影響を検証した。その結果、イミダクロプリドが、単体で、しかも低濃度で副腎髄質細胞の遺伝子発現を増強し、アドレナリン産生を促す事実が明らかになった。さらに、この低濃度のイミダクロプリドが内在性のアセチルコリンによるアドレナリンの産生・分泌も増大することが示唆された。

本研究では、これまで見えなかった、内分泌系の機能撹乱に繋がるイミダクロプリドの神経毒性発現とその仕組を捉えることに成功した。

山國 徹(Tohru Yamakuni)

論文タイトル:Imidacloprid, a neonicotinoid insecticide, facilitates tyrosine hydroxylase transcription and phenylethanolamine N-methyltransferase mRNA expression to enhance catecholamine synthesis and its nicotine-evoked elevation in PC12D cells

掲載誌:Toxicology.(2018 Feb 1)394:84-92. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29246838

投稿日時 : 2018年1月24日 12:00 PM
カテゴリ : 助成先活動情報