公正で持続可能な社会づくりをエンパワーする

empowering actions for just and sustainable society

トップページ コラム 新連載「NGOの文章術」第8回

ネコは日向ぼっこしたり
一般社団法人アクト・ビヨンド・トラスト代表理事 星川 淳
(連載開始にあたっての前置きは第1回をどうぞ

偶数回は再び技術・技法的な話題です。まだまだ取り上げたいことがたくさん残っているため、残り数回で連載を終えるには、かなり駆け足で進まないといけません。そこで、今回は箇条書きにしてみます。

たり・だが・思います

1. ~たり~たり
プロの文章でも「~たり」を単体で用いる例を見かけますが、「~たり」は2回以上セットで使うのがルールです。

【×】ネコは日向ぼっこしたり、マイペースですごすのが好きだ。
【〇】ネコは日向ぼっこしたり、モグラを追いかけたり、マイペースですごすのが好きだ。

2. ~だが
「~だが」や「~ですが」系の意味反転は、一つのセンテンスで1回しか使えません。2回以上使うと、文意がねじれてわけがわからなくなります。いっぱしの文章らしくなって便利なので、同一センテンスでの重複は避けられたとしても、気がつくと前後のセンテンスや続く段落で意味反転の「~だが」系言い回しを連発してしまうことがあり、要注意です。意味反転に近い表現でも、1回程度なら別な言い換えは可能です(下記【〇】の文例、第2センテンス参照)。

【×】私事で恐縮ですが、昨夜の深酒が祟(たた)り、朝はなんとか起きられたのですが、どうも気分がすぐれません。
【〇】私事で恐縮ですが、昨夜の深酒が祟(たた)りました。朝はなんとか起きられたものの、どうも気分がすぐれません。

3. 「思います」症候群
同じく便利で多用しがちなのが「思います」や「思う」です。同一センテンスでの重複はNGですし、前後のセンテンス、前後の段落を見渡し、「思います」だらけの子どもっぽい文章になっていないか気をつけてください。

【×】彼女がそこまで落ち込むことは絶対にないと思います。気分転換がうまいので、気持ちを上向かせる方法のひとつやふたつ、必ず見つけると思います。
【〇】彼女がそこまで落ち込むことは絶対にないと思います。気分転換がうまいので、気持ちを上向かせる方法のひとつやふたつ、必ず見つけるはずです。

疑問符・感嘆符の扱い

4. 裸は不似合い
ここ10年ほどでしょうか、友人・知人とメールやSNSでやりとりするときの延長で、フォーマルな文章や対外的なメールなのに、文末ではなく文中に「?」や「!」を裸のまま(カッコなどで括らずに)はさむ例をよく見かけるようになりました。感嘆符と疑問符は基本的に文末に置くもので(文中でも引用カギ内の文末は可)、センテンスの途中に突然出てくるのは不似合いです。

ついでに触れると、センテンスの途中に意味不明のスペース(全角ないし半角の空白)を入れることも避けたほうがいいと思います。新聞記事などではタイトル内にスペースを入れる例を目にしますが、本文中では座りが悪いです。単なるスペースのかわりに、読点か何らかの文言、記号などでつなげば問題なし。

以上は、プライベートなやりとりまで制約するものではありません(対外コミュニケーションでも、意図的に若者目線の弾けたコピーを狙う場合はアリか)。

【×】先日は社長様にまで!お出迎えいただき、感謝感激いたしました。当方スタッフの中にはなぜそこまで?と疑問を抱く者さえいて(新入 出向社員の一部)、帰路、改めて上長より御社との長いおつきあいを説明したしだいです。
【〇】先日は社長様にまで(!)お出迎えいただき、感謝感激いたしました。当方スタッフの中には「なぜそこまで?」と疑問を抱く者さえいて(新入と出向社員の一部)、帰路、改めて上長より御社との長いおつきあいを説明したしだいです。

5. 適度な間合いを
本文中で「?」や「!」のあとに次の文が続く場合、ウェブテキストなら半角スペースを入れることを勧めます(入れないと見た目が窮屈)。伝統的に縦組みの紙媒体では、疑問符・感嘆符のあとに全角スペースを入れる習わしですが、ウェブだと全角スペースは間延びしすぎる感じがします。

【×】待ちに待った屋久島リトリートだ!これに参加しない手があるだろうか?ところが、旅費が割高なうえに3泊4日の日程を確保できない人が多く、いまのところ定員の3分の1しか申し込みがないのは残念だ。
【〇】待ちに待った屋久島リトリートだ! これに参加しない手があるだろうか? ところが、旅費が割高なうえに3泊4日の日程を確保できない人が多く、いまのところ定員の3分の1しか申し込みがないのは残念だ。

エトセトラ

6. 「話」と「話し」
世代を問わず、名詞の「話(はなし)」を動詞のように「話し」と表記する例が散見されます。これは書き手が意識的に用いる場合、誤りとはいえませんが(たとえば名詞の「光」を「光り」と表記する作家はいます)、単なる不注意による誤記は避けたいもの。基本的に名詞に送り仮名はつきません。なお、「ボールの飛び」といった動詞的な名詞は例外ですし、「使い切る」「旅立つ」「若返る」などの複合動詞も、名詞形の「使い切り」「旅立ち」「若返り」に送り仮名が残ります(複合動詞は奥が深すぎるので立ち入りません)。

【×】久しぶりに恩師を訪ねたら、「あいかわらず話しが長いね」とからかわれた。
【〇】久しぶりに恩師を訪ねたら、「あいかわらず話が長いね」とからかわれた。

7. 動植物名はカタカナ(だが、漢字も捨てがたい……)
現在の社会慣行では、生物の日本語名を正式にはカタカナ表記することになっています。NGOの文章でもこれに従い、学術的な色彩の強い文書なら丸カッコ内にラテン語の学名を併記するとよいでしょう。

ただしカナ表記の大きな欠点は、おうおうにして漢字表記の和名からうかがえるその生きものの生態や文化的背景が隠れてしまうこと。それを伝えたい場合は、丸カッコ内に漢字和名を併記したほうが読み手の理解を助けると思います。

なお、野菜など栽培植物の呼び名にもカナ表記を用いることが多いですが、文中の統一さえ取れていれば、ひらがなや漢字の表記でも構いません(とくに「ニンジン/にんじん/人参」のように身近な名前ほど)。

(以下、ブリタニカ国際大百科事典/小項目事典より引用)
【辞典原文】
学名が Lycoris radiataの最も明確な和名はヒガンバナであり,シビトバナなどは通称あるいは俗名といってよいが,マンジュシャゲは通称とも考えられ,あるいは和名の別称とも考えられる。
【和名漢字表記を補足】
学名が Lycoris radiataの最も明確な和名はヒガンバナ(彼岸花)であり,シビトバナ(死人花)などは通称あるいは俗名といってよいが,マンジュシャゲ(曼殊沙華)は通称とも考えられ,あるいは和名の別称とも考えられる。

 

第7回「中空の竹」はこちらから
第9回「第四権とアート」はこちらから